議会報告 report

2019/12/27

行政の中立性はどこへ?

一般質問の3つ目は、行政の中立性について。

第3回定例会で、手話言語条例が制定されたところですが、市としては条例制定を広く市民に伝えるために、手話言語条例の制定記念イベントを計画しています。

これ自体はとってもよいお話で、ぜひ広く市民のみなさんにご参加いただけるイベントになってほしいと願うところなのですが、残念なことはその人選です。

日程や講師などは、11月の広報えにわに出ていたところで、私は、報告会(かしわのとえにわを語る会)に参加をされた市民の方から教えていただきました。
その方個人については、様々な考えがあると思いますが、経験を踏まえて、これまでやってこられた手話の取り組みなどはすばらしいと思います。

しかし、その方は現在、参議院議員という公職にあります。
参議院の比例代表選挙は、「非拘束名簿式比例代表制」というもので、個人名を書いて投票することが、政党の得票となって、議席が配分されるという仕組みになっています。
<現行の参議院議員選挙制度>

つまり、今回恵庭市が開催するイベントが、単なる選挙区内における議員(公職の候補者)の政治活動の支援にとどまらず、特定の政党の支援になる側面を持っています。

政治活動とは、政治上の目的を持って行われるいっさいの活動とされており、今回のイベントのチラシを掲示したり、配布を行うことは、行為の類型上、政治的行為に該当すると考えられます。

地方公務員法は、第36条2項で「特定の政党(中略)を支持(中略)する目的をもつて、次に掲げる政治的行為をしてはならない」としており、その行為が地方公務員法が禁じる政治的行為に該当するかは、その行為の目的が問題となります。(末尾に地方公務員法を貼ります)

今回の講演依頼は、講師が所属している、公益財団法人聴覚障害者教育福祉協会と当該議員の議員事務所を通じて行ったそうなのですが、オフィシャルサイトの講演依頼のところを見ると、明確に政治活動を応援しませんか?と記載されており、講演を行うことが、比例代表の参議院議員(と政党)にとって、大きな応援になるということがわかります。

また講師の選定過程では、手話言語条例制定プロジェクトのメンバーにもはかったということのようですが、会議の中では、他の講師の提案もあったものの、すでに行政側で打診(依頼?)をしているということを理由に、既定路線であったということも確認しております。

こうしたことから、今回のイベントは、行政の政治的中立性を大きく損なうものであり、中止すべきものです。

このような問題をはらんでいるにも関わらず、市は特に顧問弁護士に法的な相談を行なわずに、中止にはしないという判断をしています。

すでに開催をすること自体が、政治的中立性から考えると問題がありますが、今後は講演の内容についても、しっかりと検証を行う必要があります。

内容の検証に関しては、10月に開催された他の講演会でも、市民から宗教的中立性について疑義が指摘されたものがありました。しかし、講演の開催記録は、参加人数や感想などの簡素なもので、講演の内容や、事前に指摘があった事項に対して、具体的にどのようなお話をされたのかはわかりませんでした。

事前に懸念があったケースでも、詳細な記録を残していないとすると、決算の段階で、その事業の妥当性をどう評価するのでしょうか。
例えば講演の音声データを事業年度の決算が終了するまで保管する程度のことは難しいことではありません。

恵庭市役所の中にも、どこかの国と同じような空気を感じるのは、私だけでしょうか。


<地方公務員法>
(政治的行為の制限)
第三十六条 職員は、政党その他の政治的団体の結成に関与し、若しくはこれらの団体の役員となつてはならず、又はこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないように勧誘運動をしてはならない。
2 職員は、特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、次に掲げる政治的行為をしてはならない。ただし、当該職員の属する地方公共団体の区域(当該職員が都道府県の支庁若しくは地方事務所又は地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市の区若しくは総合区に勤務する者であるときは、当該支庁若しくは地方事務所又は区若しくは総合区の所管区域)外において、第一号から第三号まで及び第五号に掲げる政治的行為をすることができる。
一 公の選挙又は投票において投票をするように、又はしないように勧誘運動をすること。
二 署名運動を企画し、又は主宰する等これに積極的に関与すること。
三 寄附金その他の金品の募集に関与すること。
四 文書又は図画を地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎(特定地方独立行政法人にあつては、事務所。以下この号において同じ。)、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。
五 前各号に定めるものを除く外、条例で定める政治的行為
3 何人も前二項に規定する政治的行為を行うよう職員に求め、職員をそそのかし、若しくはあおつてはならず、又は職員が前二項に規定する政治的行為をなし、若しくはなさないことに対する代償若しくは報復として、任用、職務、給与その他職員の地位に関してなんらかの利益若しくは不利益を与え、与えようと企て、若しくは約束してはならない。
4 職員は、前項に規定する違法な行為に応じなかつたことの故をもつて不利益な取扱を受けることはない。
5 本条の規定は、職員の政治的中立性を保障することにより、地方公共団体の行政及び特定地方独立行政法人の業務の公正な運営を確保するとともに職員の利益を保護することを目的とするものであるという趣旨において解釈され、及び運用されなければならない。

地方公務員法(e-Gov)

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