主張 opinion

2022/08/20

バラマキの商品券は誰のため

基礎自治体の施策のあり方は、その地域の実情に応じたきめ細やかな対応ができることが強みであり、そうでなければならないと思っています。
もちろん、最初からすべてうまく行くかはわからないこともあるため、試行的に実施をしてみて、その結果を検証しながら改善に努めていく必要があります。

昨日、8/19(金)に臨時議会が開かれ、全市民に商品券を配布するという事業の補正予算が審議されました。

事業の概要はこちらです。
220802_えにわプレミアム付商品券事業実施要領

これまでの商品券事業と内容的には重なる部分が多いのですが、
今回は配布型ですので、1人あたり5,000円分の商品券(お店によっては6,000円で使える)を宅配でお届けします。

恵庭市では、2020年(R2)に配布型商品券、2021年(R3)に購入型の商品券事業を実施しました。
今年の1月には、市内の事業者の方へコロナの影響調査を行い、その中で商品券事業についての評価も行ってきました。
今までは券面額が1,000円でしたが、これまでの結果も踏まえ1枚500円に変更しています。

私はこれまでの検証を踏まえると、今回の商品券事業は、政策目的に対して手法がふさわしくなく、賛成できないものだと考えています。

今回の事業の目的としては、市内経済の循環・回復が主眼であり、加えて物価高騰に対する市民への生活支援の側面もあるようです。

しかし、事業者支援として見たときには大きな問題があります。
今の原油、原材料の高騰は、企業物価にも大きな影響を及ぼしていますが、今回の商品券事業では、一般消費者を対象とした事業者に限定されており、過去の実績から見ても参加店舗はわずか400店ほどです。
支援金などの支給実績から考えても、参加店舗は40%程度であり、そもそも対象とならない事業者にとっては、なんらメリットがありません。

また、令和3年の購入型商品券事業の利用実績では、
業種別で見ると、
卸・小売業 74.0%
飲食業 17.3%
理美容業 2.9%
サービス業 4.3%
その他 1.2%
となっており、参加した400店の中でも、50店ほどでは利用実績がないなど、利用が一部の小売店舗などに集中していることが見受けられます。

特に、上位5店舗での利用実績は、全体の36.29%、1億4,400万円にも達しており、事業者支援としてみると、過度に一部に恩恵が集中しています。

もうひとつの目的である生活者支援の面では、これまでの支援策は非課税世帯に限定した支援となっており、対象範囲の拡大が課題ではありました。その点、全市民を対象としたことで、確かに範囲は広がっていますが、逆に全体を対象としたことで、十分な額とはなっていません。

政府は内閣総理大臣を本部長とする物価・賃金・生活総合対策本部を設置し、物価高騰の対策を検討しています。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bukka/index.html

その中の資料では、2人以上の世帯、平均年間収入が256万円の世帯でも、年換算した負担増加額は5.6万円と試算しています。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bukka/dai2/siryou1.pdf

給与収入で200〜300万円の収入の世帯であれば、非課税の支援策もなく、(例えば2人で)10,000円分の商品券が届くだけです。

燃料費の高騰、食料品の高騰による影響は、世帯収入の低い世帯ほど影響が大きいことを考えると、
私は一律の支援ではなく、必要なところに、必要な金額を届けることが重要だと考えています。

昨年実施をした「高齢者世帯等冬の生活支援事業」のときにも対象範囲を広げるべきということは指摘をしてきましたが、
このときの事業費は2800万円であり、対象範囲を2倍に広げたとしても事業費は5,600万円ほどです。
https://kashiwano.info/article-4591.html

今回の商品券の予算額は4億5,900万円であり、計算上では8倍の金額を支給できることになります。

私はこの間、補正予算の審議のたびに、その支援対象について指摘をしてきたところですが、今後の対象拡大の可能性に期待をし、議案には賛成してきました。
しかし、今回の事業では、国から物価高騰対策として交付される交付金の大半を使い切ってしまうことから、これを認めてしまうことは、今後の大きな対象拡大を望めなくなるものと判断し、補正予算には反対しました。

これから冬に向けて、燃料費の高騰が大きく響く時期になりますが、少しでも対象範囲を拡大できるよう、今後も求めていきたいと思います。


8/21 訂正
(誤)また、令和3年の配布型商品券事業の利用実績では、
  ↓
(正)また、令和3年の購入型商品券事業の利用実績では、

皆様のコメントを受け付けております。

  1. かしわのさんの意見に賛成です。
    商品券の額面が500円になったことは小規模店舗で小規模な買い物にも利用し易くる点では改善されたと思います。しかし、利用がある限られた店舗に集中している点については市内全体の経済循環を考え予算配分にあたりさらに工夫が必要と思います。

    • 私も、商品券が500円単位となったことについては、以前から求めてきたことであり、評価をしています。

      一方で事業者支援としての政策の公平性に関しては、小売事業者の中で一部のみ優遇されている大規模店舗の優遇を除外すれば、大きく改善されるのではないかと思います。
      そのほうが、小規模事業者で使用される割合は高まるはずで、効果が高まることが期待できます。

  2. […] ところが、今回の補正予算では、8月19日にすでに議決されている商品券事業に、この財源を充当するという内容が示されました。 […]

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  4. […] 円)所得割の税額1万円までの世帯では2万円という給付金については、独自に対象世帯を広げている部分など、評価できます。しかし、問題なのは、またしても行われる商品券事業です。 […]

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