主張 opinion
2025/11/04
ふるさと納税がもたらす歪み
かしわのレポート58号の補足記事です。
令和6年度決算に対する考えはこちらの記事に書いたところですが、
https://kashiwano.info/article-6948.html
最後の一文「ふるさと納税が地方財政にもたらす歪み」について、ご意見をいただきましたので、もう少し説明が必要かと思って補足記事を書きました。
恵庭市だけで考えると、令和6年度のふるさと納税(寄附金)は、26億3,086万円に対して、ふるさと納税事業費は13億9,331万円で、約12億円が翌年度以降の財源として使えることになります。
一方、恵庭市民の寄附金控除対象者は前年比453人増の4,562人で、
寄附金控除の額は2億8,942万円(前年比3,497万円)、
市の減収額は1億4,025万円(前年比1,890万円)となっています。
恵庭市は地方交付税の交付団体のため、計算上は減収分の75%分が地方交付税として交付されることになりますので、実質的な減収は3,500万円程度となります。
これだけを見れば、恵庭市として10億円以上使えるお金が増える=恵庭市にとっていいことのようにも見えます。
一方で国全体で見ると、ふるさと納税の寄附額は、1兆2,700億円を超えたとのことで、国全体の減収額は見つけられませんでしたが、令和6年度の東京都におけるふるさと納税による減収額は1,879億円とされています。
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/about/furusato
国や地方の税収が1兆円以上(?)失われる一方で、税金によって、高額所得者ほど多くの返礼品を得ることができ、それはポータルサイトや返礼品を取り扱う事業者の収益源となっています。
ふるさと納税「悪いことばかりでない」と国は言うが…1都3県の78%が赤字 100億円オーバーの自治体も(東京新聞 2025/6/15)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/411766
こちらの記事(無料で読める部分のみ見ています)で見ても、首都圏では赤字となっている自治体が多いものの、横浜市は地方交付税により一部が補填されていたり、減収の影響は、その自治体の取組とは関係がないところで大きな差が生まれています。
財源の偏在を是正するのであれば、そもそも地方財政計画や地方交付税の仕組みを見直すべきであって、現状のふるさと納税の仕組みは、優位性の高い返礼品を用意できるか、制度の隙間をつくような自治体がお金を集めて基金を増やす一方で、国全体、地方全体としても、ゼロサムゲームの中でお金を取り合っている状態であり、税収としては必ずマイナスになります。
目先の利益があるからといって、この状態を続けることは、地方と首都圏の、交付団体と不交付団体の、高所得者と低所得者の歪みをますます大きくしていくことにつながり、是正が必要だと考えています。
恵庭市としても、変動要素の大きい寄附があるから、経常収支が悪化しても問題がないという考えではなく、経常収支の改善を進めた上で、さらに経常収支の改善につながるような投資的な経費や臨時的な経費などで、ふるさと納税による基金を活用するという姿勢を取っていくことが、今後も財政規律を維持していく上で大切だと私は考えています。
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(参考)
令和6年度 恵庭市一般会計(歳出)
ふるさと納税事業費 13億9,331万円
◎報償費 9億4,254万円
◎旅費 22万円
◎役務費 6,706万円
◎委託料 1億5,199万円
◎使用料及び手数料 2億3,148万円
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